ニチリン動向2017/11/30

投資話

ニチリンは4000円台が定着してきましたが、4500円より上には抜けず、この1ヶ月はヨコヨコです。

ニチリンには好材料がいくつかあります。
①前期比+20%以上の利益成長
②東証1部昇格期待
③分割/増配

①については第3四半期までにその実力を示しており、純然たる事実です。これを反映して年初の1700円前後から4000円台まで強く買われています。もともとPER6-7倍の水準だったものが現在のPER9倍台まで買われているのも、成長性が評価されているのでしょう。しかし来期以降にも成長が持続するかと言われると、やや疑問符が付きます。H29年度は子会社化した欧州の会社が通期寄与するため、業績の上振れが予想しやすかったのですが、来期に新たな製品や工場の立上げなどの話はなく、文字通り景気に左右されそうです。厳しめに見ると、伸びてもPER10倍前後か。

②に関しては、予想不能なものです。不正から5年が経ち、今年以降は昇格の可能性が出てきますが、経営陣にその意思があるかはわかりません。資格は満たしており、優待が存在かつ分割しているので昇格期待が高まりますが、過信はできません。仮に昇格すればPER15倍までは評価があってもおかしくないと思います。

③については3年前にも分割を行っているので、その時の状況を比較してみたいと思います。

前回の株式分割
2014/8/8に第2四半期決算のIRと同時に株式分割を発表しています。
この時は1:1.1の分割でした。9/30を基準日としての分割で、IRの文言には分割の理由として流動性を高めること、と書かれています。また配当についても言及があり、配当は分割に伴う調整は行わないため実質増配(22円→23円)と記載されています。
2014年は期初予想が経常利益で前年比+10%を予想していた年で、中間期での進捗は48.5%でした。通期では期初予想を11.4%上回り、前期比+25%で着地しました。当時の株価水準は1600円前後です。

今回の分割
2017/11/9に第3四半期決算のIRと同時に株式分割を発表。
1:1.3の分割です。期末の12/31を基準日とした分割で、配当に影響を及ぼさないため、同日に42円→44円へ2円の増配もIRされています。
2017年の期初予想は経常利益で前期比+4.1%予想でしたが、第2四半期で通期予想を前期比+30%へと上方修正しています。第3四半期での進捗は77%となっています。

簡単に比較できるものではありませんが、前回時と比べて分割の比率が少し大きく、期末の分割になるため配当についても考慮しています。また2014年には結局通期予想の上方修正は最後まで出ませんでしたが、今回は中間期でかなりの上方修正をしており、第3四半期で修正予想達成の見込みが高まったことからこそ分割のIRも出したものと思われます。為替動向次第だとは思いますが、1ドル110円の近辺ならまず問題なしでしょう。

気に掛かるのは1.3という分割比率です。なぜ2分割でもなく、前回と同じ1.1分割でもなく、半端な1.3なのでしょうか。会社がコントロールしようとしているのは株価なのか、EPSなのか、配当なのか、流通株数なのか、なにを指標にしているのかということです。
株価は前回時が1600円台で、今回は4000円台です。今回の分割では3000円台へ落ちるだけで株価を下げるのが目的ではなさそうです。ではEPSはどうかというと1.3分割で360円となりますが、これも前回値からは乖離しています。となると配当の数字を調整した結果、1.3分割という数字が出たのではないでしょうか?ニチリンは配当性向の言及がないもののほぼ10%を目途として増配を続けています。1.3分割で配当を据え置いた場合、事実上46円配→60円配となります。これが配当性向10%となると仮定すればEPSはなんと600円となります。今期が470円ですから+30%です。ちょっと非現実的ですが、今期は前期比で+30%の増益であり、これが持続するなら達成可能圏内です。
ただ、この予想はおそらくあり得ないと思います。ニチリンの来期予想は元来保守的な出し方をするので、EPS470円の翌年に年初から600円予想するとは思えません。強気で予想したとしてもせいぜいEPS500円でしょうか。年の途中に上方修正して600円に上げることはあっても、年初から60円配(分割後46円配)を維持すると配当率が今までと大きく異ってしまいます。

ということで結局わけがわからなくなってしまいました。ただ、今期の予想は高い確率で達成されそうです。問題は来期予想がどうなるかですね。保守的にEPS400などと予想してくる可能性も十分にあり、その場合、失望からPER7倍程度まで売り込まれるのも覚悟しなければなりません。年明けまで1部昇格の知らせを待って、なにもなければ2月の本決算までに少しポジションを落としておいた方が良いかもしれません。

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