REIT – 株との対比

REIT

少しREITというものについて勉強してみます。

Real Estate Investment Trust の略で日本語では不動産投資信託です。不動産および不動産信託受益権を主たる投資対象として投資家の資金を運用するファンドになります。我々個人投資家が売買できるのは上場しているJ-REITになり、非上場の銘柄は私募REITと呼ばれます。感覚的には株と全く同じで、上場銘柄と非上場銘柄があるわけです。

株とは異なる点として、REITには税引き前利益の90%以上を分配金として支払う場合に法人税が免除されるという税制優遇があります。このため現行のJ-REITは利益の100%配当が行われることが通例です。+αの分配として、利益には計上されないがプラスのキャッシュフローとなる減価償却費の分配が行われる場合もあります。

投資主の権利についても株式と同等と思ってよいでしょう。
投資主総会の議決権を持つほか、投資法人解散時の残余財産分配請求権があり、このほかに細かな権利がありますがあまり気にする必要はありません。REITは利益の90%以上の分配を前提としているため、株とは異なり利益が出る限り必ず分配金が発生するため分配金請求権を持つ点が株式と異なります。

利益のほぼすべてが分配されるため、株と比べて分配率が高くなる傾向にあり、また小口から不動産投資が行えるということで人気を集めています。私もユナイテッド・アーバンを1口だけ持っていますが、REITに関する知識が乏しくなかなか追加投資の手が出ません。いい機会ですので株と対比しながらREITの価値・構造を見ていきたいと思います。


以下、具体的に数字を設定してみていきます。
REIT・株式ともに経常利益を100稼ぐ企業を想定します。
REITの配当性向100%、株式の配当性向30%、実効法人税率30%と仮定。

REITは税制優遇があり、経常利益=純利益ですから分配金は100です。
一方で株式には経常利益から法人税を支払う必要があり、100×30%は税金として失われます。残りの70%に当たる純利益70のうち30%を配当するので配当金は21になり、残り49を内部留保します。
仮に株式の配当性向100%とした場合でも株式の配当金は70であり、経常利益が同一水準であれば法人税率分は確実にREITの方が資産効率は優位となります。

 

一方で投資家から見てどちらが得かというのはそれぞれの株価に依存します。REITであれば分配率5%前後(≒PER20倍)で推移していますし、株価は日経平均を指標とすれば平均PERは15倍前後です。
上記の例で言うと、REIT価格は100 × 20 = 2000、株価は(100×0.7) × 15 = 1050となり、同一の経常利益を稼ぐ企業でも価格差は2倍近くになります。(以下、計算を簡単にするためREIT価格2000、株価1000とします)

・投資資金2000を持つ投資家がREITを買った場合、
価値2000のREIT1口と分配金100×1口×80% (配当課税20%)= 80を毎年受けることになります。利益の全額を分配し内部留保がないため翌年度以降も経常利益に影響を与えず、REITの価値2000のままとなります。

・投資資金2000を持つ投資家が株式を購入した場合、
価値1000の株2株と配当金21×2株×80% = 33.6を受け取ることになります。こちらは49×2を内部留保として貯めますので、翌年度以降に内部留保からの利益貢献が見込まれ、ROE 10%と仮定すると49×2×10% = 9.8が翌年度の純利益に追加されます。加えて利益貢献分についてもPER15倍で評価がされるため、9.8×15 = 147の株価の上昇が見込まれます。

REITは何年たっても配当金100×80%で、REITの価値は変わりませんが、
株式は1年目配当33.6、2年目35.95、3年目38.46とじわじわ配当が増え続け、株価自体も2年目に+147、3年目に+157と上昇していきます。株式の単年のIncome GainがREITを上回る(80を超える)のは14年目になりますが、Capital Gainを考慮すると20%の課税を考慮しても2年目にはREITを上回っています。

 

上記の結果はあくまで仮定に基づく結果です。REITの分配率5%とやや高めに見積もっていますし、REITの減価償却費によるキャッシュフローも考慮していない。株式についてもROE10%で成長が続き、常にPER15倍で評価されるという前提に立ったものであり、現実とは解離があることは認識しておく必要があります。
ただ上記のように見積もっていくことでREITの問題点が見えてきます。それは利益の大半を分配することによって構造上内部留保ができない(できにくい)。結果として株式と比べて「EPSの増大が望みにくい = 分配金もREIT価額も上昇しにくい」、ということです。

次回はREITのEPS成長について見ていきましょう。

 


余談ですがここで株式が優位な結果となった主たる要因であるCapital Gainの式に目を向けると面白いことがわかります。
Capital Gain
= 純利益 × (1 – 配当率) × ROE × PER
= 内部留保 × ROE × PER
= 内部留保 × PBR

配当として受取らなかった利益について投資家は将来の配当増加のみならず、Capital Gainの形でも恩恵を受けます。内部留保にプレミアムやディスカウントを乗せた形で株価に反映されています。かなり乱暴な言い方をすればPBR1倍以下で評価されている企業の場合、留保した利益はディスカウントされて市場から評価されてしまうため、投資家としては配当として吐き出してくれた方が得になります。PBR1倍を超える場合は配当をせずに全額内部留保へ回した方がプレミアムが乗るため得になります。

これを踏まえて、高PBRの企業を安く買おうとうする(低PER)と必然的に高ROEが要求されます。しかし高ROEを叩き出す企業はすでに市場からの評価も高く、割高(高PER)になっていることが多いのです。そんなにおいしい話はなかなか転がっていませんね。

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