配当金の確定申告について

投資話

配当金は3つの課税方式の中から選ぶことができます。
・申告不要制度で申告しない
・申告分離課税で申告
・総合課税で申告

通常は申告不要制度を利用すると思います。
所得税15%と住民税5%が源泉徴収されているので追加の支払い等はありません。

2番目の申告分離課税で申告する場合というのは、損益通算できる所得に損失がある場合に還付を受けられるメリットがあります。デメリットとしては配当所得が総所得として認識されるようになるので、国民健康保険の所得として計上され保険料が高くなります。

総合課税での申告は、所得が低ければ還付を受けられる場合があります。
こちらもデメリットとして、国民健康保険の所得として計上され保険料が高くなります。


H29年度から所得税と住民税で異なる課税方式を選択することが出来る、と明確化されました。厳密には以前から可能だったようですが、明確化されたことで表立ってやり易くになりました。

配当所得は総合課税で申告すると、所得が1000万円までは所得税での配当控除として10%、住民税の配当控除として2.8%が控除できます。(1000万超はそれぞれ5%、1.4%)
配当金の源泉徴収は所得税15%、住民税5%です。ですので総合課税として申告すると、所得税では得をするけれども、住民税では損をするという状態で損益分岐点を出す必要がありました。
今後は所得税を総合課税で申告、住民税では申告不要で申告することによって、所得税の低減のメリットのみを享受することが可能になりました。

計算が非常に簡単になったので損益分岐点を出してみたいと思います。
(以下、復興特別税は簡略化するために無視します)

社保加入者の場合

まずは給与所得者で社会保険に加入している場合を考えます。
この場合、最大のデメリットである保険料の変動を考える必要がないので簡単です。

所得(万円) 所得税率 控除額 配当控除
~195 5% 0 10%
~330 10% 97500 10%
~695 20% 427500 10%
~900 23% 636000 10%
~1000 33% 1536000 10%
~1800 33% 1536000 5%
~4000 40% 2796000 5%
4000~ 45% 4796000 5%

上記の表の所得税率と配当控除の差が15%以下になる場合は常に得です。
つまり、総所得900万以下の場合は所得税率23% – 配当控除10% =  13%となりますので、源泉徴収の15%より2%安くなります。

具体的には課税所得700万で配当所得が200万の場合、
申告不要;(700万×23%-636,000円)+ 200万×15% =  1,274,000円
総合課税;(700万+200万)×23% – 636,000円 – 200万×10% = 1,234,000円
4万円 = 配当金200万の2% だけ安くなりましたね。

所得が低い場合はさらに顕著です。

課税所得300万、配当所得200万の場合
申告不要;502,500円
総合課税;372,500円
13万円の得となりました。

内訳は以下の通りで、それぞれ4.5万円+8.5万円 = 13万円
30万円分の所得税0%(∵所得税率10% – 配当控除10%)
170万円分の所得税10%(∵所得税率20% – 配当控除10%)

国保加入者の場合

ややこしいのはこちらです。
私のようにアーリーリタイヤを考えている人もこちら。
リタイヤ組は比較的計算しやすいですが、自営業で収入がある場合にはさらに面倒です。

まずはリタイヤ済みで収入がなく、配当のみが収入となっている場合を考えます。
申告不要の場合には所得は0となります。
したがって、国保の基準額も0となり、通常7割軽減が受けられます。

渋谷区での国保の保険料は均等割額が66,600円ですので、こちらをベースに計算します。
(医療分、介護分、後期高齢者支援金分を含む合計所得割額10.94%)

所得0円、配当所得200万円の場合
申告分離;配当課税40万円、住民税均等割5000円前後、国保約2万円
総合課税;所得税0円、住民税10万円、住民税均等割5000円前後、国保31.6万円

わずかに申告した方が得のようです。
ただし、扶養に入れるかどうかという点でも変化があることや国民年金の減免などを受けるためには無収入の方が都合が良いので、実質的には申告分離の方が良いでしょう。

しかしこの計算には盲点がありまして、実は国保の保険料率の算定は住民税の課税の取扱いに準ずるため、住民税で申告不要制度を利用していれば課税対象となりません。これは一部自治体のHPで確認できますが(上尾市藤沢市松山市etc.)、ここまで明言している自治体ばかりではないので個別に確認が必要です。おそらく制度が明確化されてからまだ1年なので、自治体ごとに対応が追い付いていないのでしょう。先行して検討が進んでいる自治体が課税対象にならないと言っている以上、将来的には課税対象にはならない方向で進むのではないでしょうか?

以下の画像は松山市のHPのものです。赤字ではっきり記載されています。

つまり、申告不要制度が利用できる状況 = 配当所得もしくは源泉徴収特別口座での譲渡所得の場合には、確定申告で申告をしたとしても国保料を回避できる可能性が高いです。

ということは先ほどの所得0円 配当所得200万円の場合

申告分離;配当課税40万円、住民税均等割5000円前後、国保約2万円
総合課税;所得税0円、住民税10万円、住民税均等割5000円前後、国保約2万円

ということで、単純に所得税の15%分が丸々得になります。
額にすれば30万ですからとても大きな減税ですね。
これぐらいの金額なら国民年金の減免を加味しても得だと言えます。

国民健康保険料に影響しない、ということであれば自営業の方の場合も簡単ですね。
考え方は社保の時と全く一緒です。
総所得900万以下であれば常に得です。もちろん住民税は申告不要で申告してください。


まとめ

ということで、意外や意外。
社保だろうと国保だろうと差がないことが分かりました。
総所得900万以下は常に確定申告した方が得です。
ただ自治体ごとに対応が異なる可能性があり、要確認です。

そして国保の方は、申告するしないに関わらず源泉徴収特別口座を利用すべきです。
よほど運用額が大きい場合でない限り、源泉徴収されずにすむ税金を運用して出す利益より、申告不要を利用することで得られる利益の方が大きいです。

 

 


ちなみに、、、
所得が配当所得のみの場合、
配当源泉徴収の所得税額(15%)が総合課税で申告した場合の税額と等しくなる金額は
なんと1566万円です。この場合、所得税は234万円です。

乱暴な言い方をすると、配当所得のみの人は1566万までは何も考えずに総合課税にしておけば得をします。

でももっと賢いやり方があって、900万までは総合課税で申告して、のこりの666万円を源泉徴収にしておけば184万円で済みます。これをするためには口座を分ける必要があるので、運用額がある程度大きくなったら口座ごとに利益の出し方を調整した方がよいですね。

 

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